右手にピストルを左手にタンバリンを

札幌の劇団「yhs」に所属する櫻井保一のブログ

思い出話

何年も前のこと

 

「部下が結婚する、式の余興で流す動画を撮りたい」

という依頼が来た

 

その日はクリスマスだった

誰かといる予定もなかったし仕事もなかったから受けた

いざ会った依頼主は肩幅の合わないスーツを着ていた

 

「その娘は刑務所の受付で働いている。キミは彼女が退勤したらすぐに声をかけてくれ、『いつも友達の面会に来ているんですが、実は気になっていたんです、あなたはとても素敵だ』とかなんとか言って、そしたら彼女は困惑するだろう、そこで彼女は断るんだ、『夫がいますので』って、そんな動画だよ、盛り上がるよな」

 

頷いて、帰路につく彼女に声をかけた

思いのほか話が弾んだ

音楽の話だったかな

たしかボブ・マーリーが好きだった

 

そのうち上司が出てきた

 

「誰だ君は、私は所長だ」

 

頷いて、そのまま地下鉄に乗った

 

口座には10倍の金が入っていた